MCバトルの『ネタ』『即興』議論について考えみる【フリースタイルラップ】
フリースタイルラップバトルについてファンや関係者が必ず話題になる話として『ネタ論争』と言うものがあります。ネタというのはいわゆる''仕込み''の事で『即興が醍醐味のフリースタイルラップなのに、あらかじめ用意してきたものを使う』ってやつですね。
MCバトルとかあまり興味ない人からすると「そんなのダメに決まっとるやろが!」って感じかと思うんすけど、これってそんな簡単な話じゃないんですよ。
だからこそこの議論はバトルヘッズの間で常に論争が繰り広げられている訳なんですが、今回はその事について話してみようかと思います。
全小節仕込みネタはありえない
MCバトルを見慣れている方には説明の必要もないですが、初心者の方に説明させていただくとすればまず自分のバース(ターン)のラップをすべて仕込んで戦う事は現在は不可能です。
まだMCバトルが実験的な試みだった創世記時代の初期の初期、バトルに出場する事になったDARTHREIDER(ダ―スレイダー)は「フリースタイルバトルってよく分からなかったからとりあえずやる前に言う歌詞を決めてきた」と言っていた事がありました。
色々と探り探りだったこの時代の事はさておき、これがいわゆる全仕込みという事になるのですが『アンサー(相手の言葉を使ったりして言い返す)』という概念がある現在のバトルではこれだと絶対に勝つことはできません。
「俺の名前は〇〇、俺は絶対お前を倒す」のような凡庸性が高い言葉だけを使ったラップを前もって用意する事はできますが、これだと相手の言葉に対しての受け答えができず、リテラシーがべらぼうに上がった現在ではオーディエンスに一発で見抜かれてしまいます。
『言葉の引き出し』とは
ここからが本題です。フリースタイルは即興が大前提なワケですが、彼らバトルMC達は自分のラップの即興性を高めるために膨大な時間をフリースタイルに費やしています。
サイファー(数人で丸くなってラップしながら会話する)だったり家で1人で延々と口ずさんだり、若い人だと1日〇時間とノルマを課している人もいるでしょう。
それが何カ月、何年単位ともなると通算でとんでもない量の言葉が脳にインプットされていて、頭に入っている熟語が自然と言葉にでるようになり、さらにバトルでそれを組み合わせて使える''ラップ脳''になっています。
この自然と即座に出せる言葉の数・熟語数がいわゆる『引き出し』というもので、ラッパーの脳内ではこの引き出しから瞬時にいくつかの言葉が選び出され一つの文となり韻を踏みながら会話します。
『引き出し』と『ネタ』
ここです!この話ではここでみんな揉めるわけです笑。この『引き出し』と『ネタ』の線引きが人によってかなり違うので答えがでないんですよね。
ラップに限らず誰でも口癖があります。ブログなど自分で文を書いている人などもよく自分が多用する表現ってあるじゃないですか?引き出しにもクセがあって「このラッパーってこの言い回し好きだな~」みたいな特徴があるんです。
しかし人によってはそれを「またこの表現使ってる、ネタだ!」と感じる人がいるのですが、これが非常に難しい問題なんですね・・・
個人的にネタというのは「今日はこれを言うぞ!」とあらかじめ暗記してきたものを言う事だと定義しているのですが、そうではなく自分の表現が自然と即興で出てしまったものはそうではないと思います。この解釈が個々でバラバラなんです。
キリがないので結論「どっちでもいい」
さらに言ってしまえば結局ネタだろうが何だろうが観客にそう思わせなければいいだけですし、逆に韻があまりに上手すぎて即興なのに「ネタだ」とか言われれてる事もあるわけです。
さらにさらに相手のバースに何か言われたとして、「コイツ何言ってんだ?次の俺のバースでぜってーこう言い返してやる!」と考える事はネタなのかとか、
さらにさらにさらに前半4小説だけ即興で最後4小説だけ得意のラインで落とすのは邪道かどうかとか、言い出すとキリがないんすよね・・・
って事で俺が出した結論は「コイツは『ネタ』かどうか?」という探り自体が不毛。カッコよければどうでもいい!という事になりました。
例えばフリースタイルダンジョンのFORKや呂布カルマに対し、仕込みかどうかの議論は無駄じゃないですか。上記で言ったように理由付けようと思えばなんだって言えちゃう、でも誰が何と言おうと2人はカッコいい訳です。
FORKの「姓はアイスバーン、名はフォークだ」というラインは何度も使い回してるけどカッコイイじゃないですか~。でもこれを「あれ何度も使い回してるからネタでしょ」とか言う冷めたヤツは全身を蚊に刺されてかゆみ悶え苦しめばいいと思うんだ。