MSC【ラッパー解説】嘘を付く事は許されない『リアル』が絶対のルール。漢a.k.a.GAMI率いる新宿拡声器集団
今回はフリースタイルダンジョン初代モンスターでお馴染み漢 a.k.a. GAMIさん(以下敬称略)率いる新宿拡声器集団MSC(Mic Space Crew)の紹介です。2000年代のストリートラップ全盛期に最前線に立っていたグループの1つですね。
メンバーは脱退入隊の入れ替わりやDOGMA(ドグマ)のいた別働部隊SATELLITEの存在など音楽グループとしてのMSC正式メンバーはよく分かりませんが初期のメインMCはMic Spaceの漢 a.k.a. GAMI(旧MC KAN)とTABOO1・SIDE RIDEのPRIMAL・O2・GOの5人のMCです。
ドンヨリとした不穏なトラックに直接的で過激な歌詞は当時の日本語ラップグループの中でも際立った存在感を放っていて、なおかつライムテクニックの面でもまだ成熟しきっていない当時ですでに今と遜色ないスキルを個々が持っていたグループでもあります。
ジャパニーズヒップホップ2000年史を語る上では欠かす事の出来ない彼らの魅力を解説させていただきます。
メンバーはゲーム・テレビ禁止だった
世間一般の印象としてなんとなくある''好きにやっていそう''というラッパーの記号的なイメージとしては意外かもしれませんが彼らは結成当時、「活動中はテレビ禁止・ゲームも禁止」というルールを作ったと漢がドミューンのインタビューで語っています。
クルーで規律を作り、ある意味『会社』のように統率された厳しいMSCの当時の活動を振り返り漢が
「趣味でもなんでもいいけどやるからには本気でやろうぜって感じでした。本気を出さない奴がいると失敗の元になります。当時の俺達はオカシイくらい一丸となっていました。バカなくらい本気でピュアでした」と言っていたのが印象的です。
MSCの掟『リアル』
その規律の中で最も彼らが重きを置いていると感じたのは「実際の出来事を表現する、嘘はつかない、~ぶらない」というルール『リアル』です。
自分の思いや経験を等身大のまま表現する歌詞はもちろんの事、驚愕したのは例えばフリースタイル中に吐き出してしまった言葉が先に来て、その『リアル』を守るために行動が後から来るという事もあるという部分です。
これは相当恐ろしいですよ。
どういう意味かというと、ラップで口走ってしまった事は『必ずやらなければいけない』。つまりハイプ(誇大)な表現は一切許されないということ、軽はずみに何かを言ってしまったらそれをリアルにしないとならないという事です。
バトルなどでもよく多用される「お前を殺す」「首かっ切る」みたいな比喩表現を漢が使わないのはこういったルールがあるからかと思います。このルールは非常に厳しい、厳しいけどHIPHOPです。
なのでMSCのメンバーとして活動していくには等身大で生きる事を余儀なくされる訳です。「ラッパーはマイク持てば何言ってもいい訳じゃない」これを素で体現した超絶硬派な新宿スタイルまじヤバイです。
初期メンバーが揃う事は困難
やはり当時のファンからすると漢 a.k.a. GAMI・TABOO1(タブー)・PRIMAL(プライマル)・O2(オオツ)・GO(ゴー)のマイクリレーが見たいところなんですが、現在O2は沖縄に移住し休止中、PRIMALは北海道、GOは引退という事で初期メンバーでの復活は難しいのではと推測します。
2015年の復活アルバムではMEGA-G、DOGMAがMSC名義の楽曲に参加したもののGOとO2は不参加で、SIDERIDE(PRIMAL・O2・GO)ファンの自分としては寂しいところです。
ストリートのリアル表現を体感せよ
楽曲紹介はどれにしようか迷いましたがMSCが公に登場してからのキャリア1曲目の『幻影』にしようと思います。不穏感と過激なアウトロー表現がヤベーです。ちなみにコレはDABOへのディス曲1発目でもあり、ここからBEEFに発展します。
この曲は漢1人だけですが、やっぱこの頃の漢は活舌がいいですね。「脱社会人宣言、鮮明に証明」は今でもたまに使わせてもらってます笑、とりあえずMSC要チェックなんでよろしく。
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