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不可思議/wonderboy【ラッパー解説】若くして事故でこの世を去ったポエトリーラッパー。今も生き続ける彼の楽曲

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今回はポエトリーラップというジャンルではここ日本で代表的な存在と言えよう詩人ラッパー不可思議/wonderboyさん(ふかしぎワンダーボーイ・以下敬称略)をご紹介します。

2011年6月、24歳という若さで交通事故のためこの世を去ってしまった不可思議/wonderboy。今もTwitterでソーシャル上に残っている彼の最後つぶやき「カフェオレ飲みてー」「カフェオレ予算組まないと破産する」ってのを見ると非常に淋しい気持ちになります。

不可思議/wonderboyの楽曲は彼の死後大きくバイラルを起こし、今もファンはどんどんと増えていっています。

死生観や人生観、人間が感じる気持ちの光や闇を独特なワードセンスで表現する彼のポエトリーリーディングとラップが融合されたスタイルは、おそらくラップに一切興味がない人でも耳を傾けてしまう魅力があると言えるでしょう。

という事で日本を代表する詩人ラッパー不可思議/wonderboyの魅力を解説させていただきます。

 

全国的に有名になったのは亡くなった後

ポエトリーラッパーと言えば色々なアーティストが思い浮かびます。降神(志人・なのるなもない)小林大吾tha blue harbMOROHA狐火などが有名ですかね。不可思議/wonderboyが彼らと肩を並べる知名度になったのは彼が亡くなった後です。

今ではyoutubeで300万再生を突破している代表曲『Pellicule』を彼が亡くなる5ヵ月前に路上で歌ってる映像が公式チャンネルに上がっていますが、ほぼ誰も見向きせず立ち止まって聞いている人はほんの数人で今のプロップスからは想像できない状況です。もし今同じ事をやったら速攻で人だかりになります。

彼の死後、所属レーベル『LOW HIGH WHO?』やラッパー神門などのフックアップにより国内で大きなバイラルを起こし人気が爆発しました。2015年には『Living Behavior 不可思議/wonderboy 人生の記録』というドキュメンタリー映画も公開されています。

 

ちなみに「''24歳で亡くなったアーティスト''というバックボーンがプロモーションになっている」「亡くなった事で神格化されている」って意見あるじゃないスか。自分はこの意見、まったくネガティブに捉えていません。

もし彼が生きていたら今のプロップスはあったかどうかなんて分からないし、逆にもっと売れていたかもしれないし、そんなのは誰も分からない。

自分もですがそういうバックボーンがフックになって興味をもったリスナーや、そういった部分に感情輸入するファンも多くいる以上、そこも含めての作品だと思います。もし彼が生きていたら今ある楽曲もまた違って聞こえるのかもしれませんね。

 

彼の表現する『リアル』は伝わりやすい

HIPHOPでは『リアル』って言葉がよく出てくるんですが、それはラッパーの生き様や思いが等身大で表現されていて聞き手にもそれが伝わる時なんかにこのワードが使われたりします。

彼の表現する『リアル』というのは''恵まれない環境で育ったラッパーの成り上がり''といった様なゴリゴリしたものではなく誰しもが日常で感じるであろう人生の葛藤や不安、そういったものを上手く代弁しているところが大きな魅力の1つだと思います。

苦境からの成り上がりストーリーという尖った表現の場合、いわゆる「''普通''の人生を送ってきた」と自分自身に思っているような人にとっては「自分はそこまで波乱万丈な人生じゃないし」「この人に比べれば自分は苦労していないな」って気持ちが先行して逆に聞き手の劣等感を強めてしまう様な事も大いにあると思っています。

不可思議/wonderboyの表現する人生観は聞き手の自分自身への人生のタグ付けが『普通』でも『エリート』でも『アウトロー』でもそういった自己解釈とは関係なく万人が共感できるリリックを書いています。

彼の楽曲やソーシャル上の発言は今の状況をネガティブに捉えているものが多いのですが、そんな中でも楽しく生きていこうと自分を奮い立たせたり、プラス面にも目を向けようと自分に言い聞かせたりするような繊細な若者らしい心の揺れを表現するのがとても上手なアーティストです。

ポエトリーで芸術的ながらも、あまり難しい単語を使わず心情を分かりやすく伝える歌詞も彼の曲が多くの人に響く理由の1つかもしれません。

 

詩人バトル『スポークンワーズスラム』

皆さんはスポークンワーズスラムを知っていますか?簡単に言うと詩を朗読してどっちがヤバかったか審査で決めていく大会なんですが、彼はこの大会の国内強豪アーティストでもありました。

結構この大会とHIPHOPのつながりは深くて、この大会での活躍をキッカケにCDリリースにまで至る人もいる程です。今で言うところの『MCバトルで活躍⇒人気が出てCD発売』の詩人バージョンってところでしょうか。

大会の色にもよるんですが詩の朗読大会なのでラップに限らず様々な人が出場しています。普通に紙を持って詩を読み上げる人もいれば劇団の舞台を思わせるような表現法の人もいて、その中にラップを使う人もいます。

バトルと言ってもMCバトルの様に相手をディスしたりとかはなく、持ち時間があってその時間内で自分の作品を聞かせていくという感じです。

自分が昔見ていた『新宿スポークンワーズスラム』ってイベントはかなりヒップホップよりの大会だったというか、出場者にラッパーが凄く多かった印象がありますね。不可思議/wonderboyもこのイベントの優勝者です。

このスポークンワーズスラムの世界は本当に色々なスタイルで自分を表現しているので詩に興味ある方は結構好きなんじゃないかと思います。興味のある方は是非チェックしてみて下さい。

 

現在も生き続ける彼の曲

ん~~曲紹介は何にしようか非常に迷ったんですが・・・まあやっぱり『Pellicule』ですね。この歌は多くの人がカバーをしている名曲です。先にも名前を挙げた神門の『Pellicule』とセットで聞くとよりヤベーです。

不可思議/wonderboyはラップ好きじゃない人でも余裕で聴けるので、あなたの周りに「HIPHOPとか苦手で・・・」って言ってる人いたら是非コイツをおススメしてやってくれ!もちろんラップファンもこの曲くらいは知っておいていいと思うゾ。

他にもたくさんのラッパーを語らせてもらってます。良かったらこちらから覗いてやって下さい。ラッパー解説 カテゴリーの記事一覧