降神(志人・なのるなもない)【ラッパー解説】狂気と幻想的な世界観が同居したポエトリーラップ
好きなHIPHOPアーティストは誰と聞かれれば多すぎて答えに迷いますが、とりあえず挙げるとするなら自分の頭にまず思い浮かぶのはこの降神(おりがみ)です。
志人(シビット)さん、なのるなもないさん(以下敬称略)の2人が組んだこのヒップホップユニットはおそらく今後も現れないのではないかと言えるスタイルで日本のHIPHOPに革命をもたらしたと言っても過言ではないと思います。
自分と同じく降神信者だというprime__numberさんのリクエストで今回はこの降神を解説していきたいと思います。
あまりにブッ飛んだ降神の世界
自分が彼らを知ったのは漢 a.k.a. GAMI率いるヒップホップグループMSCのMIXCDか何かだったかと思いますが、初めて聞いたときは「ちょ、ちょ、誰コレ!?」と衝撃が走ったのを覚えています。
そこで表現されている彼らの音楽は2000年代初期の当時主流だったストリートラップとは明らかに異質なモノで、(アウトロー的な悪さとは全くもって別の)狂気とポエム調の語りが混同された完全独自の世界観で構成されています。
この衝撃は自分だけでなく当時の日本語ラップリスナーも同じだったようで、志人の記事でも言及していますが2003年に発売されたファーストアルバム『降神』は自主制作にもかかわらずそのヤバさが口コミで広まりCD-Rの焼き増しで3000枚近くの売り上げを記録する伝説のアルバムとなりました。
翌年に発売されたセカンドアルバム『望~月を亡くした王様~』はもはや文字では解説不能ともいえる出来で、ファーストアルバムが聞きやすいと思えるくらいのさらに別世界の仕上がりとなっていて、常人が作ったとは思えないレベルの異作です。
ちょっと説明できない領域
この記事を書いていて改めてつくづく実感しますが、この降神というグループの魅力を文字や口頭で説明しようとするとかなり難しいです。
彼らを知る人なら分かってくれるかと思いますが「降神ってどんなアーティスト?」と聞かれても色々考えたあげく「ん~~、まあとにかく聞いてみて」としか言えないんですよね。
言及されない歌手としてのスキル
この事についても志人の記事と少し被りますが、この降神の魅力は「ラップ上手い」とか「トラックがいい」とかそこが論点ではない部分があるので彼らのスキル自体にあまり触れる人は少ないです。
世界観に目が移りあまり触れられない傾向にありますが、実際に2人のラップのスキルは超ハイレベルですし、メロウなラップの部分を聞いている感じ(歌うパートが結構ある)歌が普通に上手いです。
個人的にはここはかなり重要なファクターだと思っていて、いくら表現が面白いものでもラップや歌が下手では音楽として微妙なものになってしまいますし、ここまで降神が評価されるのもスキルという土台ががあるからこそだと思います。
現在のバトルブームの礎を作った人達でもある
『フリースタイルダンジョン』や『高校生ラップ選手権』の大流行もあり日本ではちょっとしたムーブメントが起こっているフリースタイルラップですが、彼らはそのパイオニア的な世代でもあります。
『即興でラップをする』という事が現在ほど普通でなかったBBP(ビーボーイパーク)初期の頃から2人は『降神・鶴(なのるなもない)』『降神・非行期(志人)』という名でMCバトルに参戦しています。
BBP(ビーボーイパーク)初期といえばKREVA(クレバ)やMSC、般若やICEBAHNなどのフリースタイラ―が若手の時代ですから、降神も彼らと共にラップバトル創世記時代でバリバリやっていたメンバーの一員です。
現在のバトルブームがあるのも彼らパイオニア達の活動があってこそですので、MCバトルだけに興味がある、いわゆる『バトルヘッズ』達にもこの降神は是非ともチェックしてほしいですね。
狂いたい人は是非とも笑
「日本語ラップダサい」とイメージで言う人には「とりあえず降神を聞いてから言ってくれないか?」って言いたくなるくらいおススメなアーティストです。
降神としての活動はもう何年もしていないのでファンとしては復活を願うばかりですが、もし新譜が発売されたら自分含めファンは落ちた飴に群がるアリのごとく飛びつく人も多いと思うくらい中毒性が高いです。
一度ハマってしまったら抜けられなくなりますよ笑。もちろん聞きやすい曲もたくさんあるので気になる人は是非チェックしてみて下さい。
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